• 投稿者サムネイル画像 増井 光生
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情報収集の多様化が進んでいる中で、依然として強い立ち位置を保っているのが検索エンジンです。

そのため、ユーザーが検索エンジンをどのように活用して情報を探しているかを理解する必要がありますが、その中で注目されているのが「バタフライサーキット」という概念です。

この記事では、この「バタフライサーキット」を軸に、ユーザーの検索行動を深掘りし、その背後にある検索意図を探ります。さらに、検索行動の理解を基にしたマーケティング戦略や、新たなビジネスの可能性について考察します。

ユーザー行動の解析は、単なるデータ分析ではなく、「意図」を深く理解することが重要です。そのための第一歩として、検索行動のダイナミズムを一緒に探っていきましょう。

この記事のポイント

  1. 「バタフライサーキット」の意味
  2. 多様化する検索行動
  3. 検索意図に沿ったマーケティング考察

バタフライサーキットとは

蝶はいない

「バタフライサーキット」という概念は、ユーザーが情報を検索する際の行動パターンを示した言葉です。この行動は、単一の情報源を深掘りするのではなく、複数のウェブサイトやプラットフォームを行き来しながら、目的に近づいていく様子を指します。

パルス消費

バタフライサーキットは、Googleが2019年に発表した「パルス消費」の研究から生まれた概念です。

一見衝動買いに見える「パルス消費」も、購入の前にバタフライサーキットを経由して起こっているようです。

パルス消費の大きな要因としては、スマートフォンにより、お店に行かなくてもボタンひとつで購入できるようになったことだと言われますが、その前に重要なのは、購入前にバタフライサーキットのような検索行動を繰り返し、情報を収集しているということです。

従来のマーケティング理論では、消費者は「認知→興味関心→比較検討→購入」という段階を経て購買に至るとされていましたが、現代では必ずしもこの流れに当てはまらないケースが増えてきました。

Googleの調査によると、消費者は商品を購入するまでに、様々な情報源に触れているのです。
「選択肢を広げる検索行動(さぐる)」 と 「選択肢を絞る検索行動(かためる)」 を交互に繰り返していることが明らかになりました。この様子が、まるで蝶が羽ばたくように見えることから、「バタフライサーキット」と名付けられました。

バタフライサーキット

その中で、選択肢の中でピンと来た時だったり、気になっていた商品の購入を決心したタイミングで購入するのがパルス消費の代表的な例です。

従来のAIDMAモデルとの違い

AIDMA

今では、消費者の購買行動はAIDMA(アイドマ)というモデルで説明されることが多くあります。

AIDMAとは、以下のような直線的な流れを想定したものです。

  • Attention(注意):商品やサービスに気づく
  • Interest(興味):関心を持つ
  • Desire(欲求):欲しいと思う
  • Memory(記憶):覚える
  • Action(行動):購買に至る

しかし、情報収集の多様化やスマートフォンの高性能化により、AIDMAのように一方通行なモデルでは、現代の複雑な購買行動を説明しきれなくなっています。

そこで登場したのが「バタフライサーキット」です。

関連記事:マーケティング4.0とコトラーの5A理論からのマーケティング5.0

「さぐる」「かためる」を繰り返す消費者の行動

バタフライサーキットでは、消費者が「さぐる」「かためる」という2つのフェーズを繰り返しながら、購買決定に至ることを示しています。

  • さぐるフェーズ:消費者は様々な情報に触れ、興味関心の幅を広げていきます。
  • かためるフェーズ:興味関心の対象を絞り込み、購買の意思決定を行います。

バタフライサーキットでは、消費者はこの2つのフェーズを何度も行き来し、最終的に購買に至ります。

情報探索を掻き立てる8つの動機

消費者が情報収集行動を起こす背景には、様々な動機がありますが、Googleは、消費者の情報探索を掻き立てる8つの動機を提唱しています。

さぐるかためる
気晴らしさせて
学ばせて
みんなの教えて
にんまりさせて
納得させて
解決させて
心づもりさせて
答え合わせさせて
参照:Think with Google

それぞれの詳細は以下を表します。

  • 気晴らしさせて:関心のあるものについて情報収集自体を楽しみたい
  • 学ばせて:今まで知らなかったことについて知りたい
  • みんなの教えて:世間や周囲の人が使っている商品を知りたい
  • にんまりさせて:一般的ではないあまり知られていないサービスなどを知りたい
  • 納得させて:自分の考えが正しいのか確認したい
  • 解決させて:困っているときに今すぐ役立つ情報を知りたい
  • 心づもりさせて:購入後にがっかりしないようハードルを下げておきたい(期待値をあまり上げたくない)
  • 答え合わせさせて:商品を実際に購入した後に自分の選択が間違ってないと思いたい

個人的には、にんまり以上のエンタメ枠が絶対あると思うのですが、個人の感想なので気にしないでください。

関連記事:Google AI Overview・GPT SearchがあってもSEOはオワコンにならないと思う

検索意図の重要性

ユーザーが検索エンジンを利用する際、そこには必ず「何かを知りたい」「何かを見つけたい」「何かをしたい」といった意図があります。

「足の疲れ マッサージ器 おすすめ」などの検索クエリからある程度意図を想定できるものもあれば、「足の疲れ」のように多様すぎて掴みにくいものまで様々です。

検索意図を理解することは、ユーザーのニーズを捉え、適切な情報やサービスを提供するために非常に重要です。

なぜなら、ユーザーの求める情報と提供する情報が一致しなければ、すぐに離脱されてしまうためです。

サジェストに「おすすめ」「ランキング」などが出てくれば、「みんなの教えて」需要が高く、「後悔」などが出てくれば「心づもりさせて」「答え合わせさせて」需要が高い商品だと推測できます。

関連記事:Google広告の部分一致がインテントマッチへ|検索意図を捉えましょう

パルス消費の実例

実例というより、自分がまんまとパルス消費をしてしまった例ですが、足の疲れに悩んでいる状態の人間がいました。
疲れがある時には実際の症状や起こりうることを調べたり、逆に弱まれば他の人はどうなんだろうという口コミを調べたり、全く症状のない時にはそもそも忘れていたりしました。

そんな中、偶然にもちょっと高めのマッサージ器を猛烈におすすめされて、普段なら買わないのにいいかもと思って購入に至りました。

まさにパルス消費なのだろうと思います。
そしてしばらくすると商品のレビューを見て安心するのだろうと思います。

各検索意図において考えてみるWebマーケティング

前章でご紹介した8つの検索意図。それぞれの意図に対して、どのような対策を講じれば良いのでしょうか?

ここでは、各検索意図に合わせたコンテンツ作成、SEO対策、広告戦略などを具体的に考察していきます。

「気晴らしさせて」への対応

  • 魅力的なコンテンツで惹きつける
    • ユーザーの目に止まるような、ビジュアルやキャッチコピーにこだわったコンテンツを作成
    • 例:思わずクリックしたくなるようなサムネイル画像、興味関心を惹きつけるタイトルなど
  • 関連コンテンツへの導線を用意
    • 気晴らしで訪れたユーザーを、他のコンテンツへ誘導する導線を用意
    • 例:関連記事へのリンク、おすすめコンテンツの表示など

「学ばせて」への対応

  • 信頼性の高い情報提供
    • 正確で分かりやすい情報を提供し、ユーザーの信頼を獲得
    • 例:データや引用元を明確にする、専門家による監修を受けるなど
  • SEO対策で上位表示
    • ユーザーが検索しやすいキーワードで、SEO対策を実施
    • 例:検索意図に沿ったコンテンツの作成、ページの読み込み速度の改善など

「みんなの教えて」への対応

  • 口コミやレビューを充実させる
    • 実際に商品やサービスを利用したユーザーの声を掲載し、購入の参考になる情報を提供
    • 例:レビュー投稿キャンペーンの実施、口コミサイトへの誘導など
  • SNSを活用した情報発信
    • SNSでユーザーの声を収集したり、商品に関する情報を発信
    • 例:Xでの評判の収集、Instagramでの商品紹介など

「にんまりさせて」への対応

  • エンタメ性の高いコンテンツで楽しませる
    • ユーザーを楽しませるような、動画や画像、クイズなどを活用したコンテンツを作成
    • 例:商品紹介動画、面白画像、インタラクティブなコンテンツなど
  • シェアしやすいコンテンツ作り
    • ユーザーがSNSでシェアしたくなるような、話題性のあるコンテンツ作りを心がけましょう。
    • 例:共感を呼ぶストーリー、インパクトのあるビジュアルなど

「納得させて」への対応

  • メリット・デメリットを明確にする
    • 商品やサービスのメリットだけでなく、デメリットも包み隠さず提示することで、ユーザーの納得感を高める
    • 例:比較表の作成、FAQページの設置など
  • 専門性の高いコンテンツで説得力を持たせる
    • データや根拠に基づいた、論理的な説明でユーザーを説得
    • 例:ホワイトペーパーの作成、専門家による解説記事など

「解決させて」への対応

  • ユーザーの課題を解決するコンテンツを作成
    • ユーザーが抱える問題や疑問を解決できるような情報を提供
    • 例:ハウツー記事、トラブルシューティングガイドなど
  • 検索意図に合致したキーワード
    • ユーザーが検索する可能性の高いキーワードでコンテンツを作成
    • 例:ロングテールキーワードでのSEO対策、関連キーワードの抽出など

「心づもりさせて」への対応

  • 購入を後押しする情報提供
    • ユーザーの購入意欲を高めるような情報を提供
    • 例:期間限定割引、送料無料キャンペーン、ポイント還元など
  • 安心感を醸成するコンテンツ制作
    • お客様の声や保証制度などを紹介し、ユーザーに安心感を与える
    • 例:お客様の声、返金保証制度、セキュリティ対策など

「答え合わせさせて」への対応

  • 購入後のサポート体制を充実させる
    • 商品の使い方やアフターサービスに関する情報を提供し、ユーザーの満足度を高める
    • 例:使い方動画、FAQページ、お問い合わせ窓口など
  • リピーター獲得のための施策
    • リピート購入を促進するためのキャンペーンやロイヤリティプログラムの実施
    • 例:クーポン配布、ポイント制度、会員限定イベントなど

まとめ

今回は、現代の複雑な消費者行動を理解するためのフレームワークである「バタフライサーキット」について紹介しました。

もはや、消費者は一方通行のマーケティングファネルに沿って行動するわけではありません。様々な情報源を自由に行き来し、比較検討を繰り返しながら、最終的に購買を決定します。

Webマーケティングの世界は常に変化しています。今後も、消費者の行動変化を捉え、柔軟に対応していくことが重要です。

この記事を描いたスタッフ

投稿者サムネイル画像 増井 光生

マーケター。Google GenerativeAI (生成AI)for Educator修了。Google アナリティクス認定資格、Google 広告認定資格(検索、アプリ、動画、測定、クリエイティブ、オフライン販促)、Google モバイル エクスペリエンス認定資格、You Tube Music 著作権管理認定資格保有。ビジネスモデル鑑定士。推しはGemini。